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Planescape: Torment: Enhanced Edition 日本語化に関するメモ

Planescape: Tormentの日本語化作業中に得た情報のメモを残すためのページです。ゲームの操作方法やオプション設定など、プレイヤー向けの情報も記載しています。

日本語化する方法についてはこちら:https://www.tranaz.com/pst

(編集中……) 

日本語化全般

日本語化作業の手順

本作を日本語化する手順をまとめると、以下のようになります。それぞれの詳細は、以降の節で解説していきます。

  1. 英語のTLKファイルをアンパック
  2. コンテキストデータの抽出
  3. Googleスプレッドシートにアップロード
  4. 翻訳
  5. Google Apps Script Glossaryで用語集の単語を置換
  6. 出力用テキストの整形
  7. 翻訳データのダウンロード
  8. Furigana Font Makerでルビ用フォント、テキストの作成
  9. 日本語のTLKファイルをリパック
  10. 行頭の改行を修正するMOD作成
  11. カットシーンに字幕を追加するMOD作成
  12. 画像を日本語化するMOD作成
  13. 各ファイルをゲームフォルダに配置

これらの手順のうちで必須なのは「TLKファイルのアンパック」「翻訳」「TLKファイルのリパック」「ファイルをフォルダに配置」だけです。

他の手順は、翻訳作業を効率化するための作業や、日本語化のクオリティアップのための作業です。

改変・再配布する手順

日本語化パッチを改変して再配布する手順をまとめると、以下のようになります。それぞれの詳細は、以降の節で解説していきます。

  1. 翻訳テキストのスプレッドシートをコピー
  2. 改変
  3. Google Apps Script Glossaryで用語集の単語を置換
  4. 翻訳データのダウンロード
  5. Furigana Font Makerでルビ用フォント、テキストの作成
  6. Font Forgeでフォントのサイズを修正
  7. 日本語のTLKファイルをリパック

用語集やルビ文字に関係のない改変であれば、「日本語のTLKファイルをアンパック」「メモ帳などで改変」「TLKファイルをリパック」だけでOKです。

固有名詞の訳を変更したり、固有名詞だけ英語にしたい場合などは、スプレッドシートの用語集を修正するだけで実現できます。

必要な知識

本ページの項目には、内容を理解するために基本的な知識が必要になるものがあります。本ページを読み進める前に、入門ページなどにざっと目を通しておくと理解しやすいと思います。

  • コマンドプロンプト(テキストファイルの変換に)
  • Google スプレッドシート(翻訳作業に)
  • Google App Script(用語集による置換に)
  • Python(ルビ用フォント作成に)
  • C#(コンテキストデータの抽出に)
  • Lua(改行修正MOD作成に)

 

テキストデータ関連

TLKファイルのアンパック

ゲームテキストはTLK形式のファイルに保存されています。

Project P\lang\en_US\dialog.tlk

このファイルは圧縮されていて、このままでは編集できません。

TLKファイルを編集できる形式に変換するアンパックツールはいろいろな方が開発されていますが、私は下記ページの「tlk2csv」のver 1.2.2を使用しています(jpmodさんが開発されたBaldur's Gate用のツールですが、本作にも使えます)。

これをダウンロードして展開し、同じフォルダにdialog.tlkをコピーします。

エクスプローラのアドレス欄に「cmd」と入力してEnterを押すとコマンドプロンプトが起動するので、下記コマンドを実行するとTLKファイルがアンパックされ、CSV形式のファイルが生成されます。

tlk2csv.exe dialog.tlk dialog.csv

TLKファイルのリパック

テキストファイルをTLKファイルに戻すリパックツールもいろいろな方が開発されていますが、日本語化する場合は文字コードを指定できるものである必要があります。

アンパックと同じ「tlk2csv」を使用する場合は、同じフォーマットのCSVファイル(UTF-8形式)を用意し、下記コマンドでリパックできます。

csv2tlk.exe -t 65001 dialog.csv dialog.tlk

ゲームデータの閲覧・出力

 

 

 

 

コンテキストデータの抽出

dialog.tlkにはテキストデータが羅列されているだけで、これだけではゲームのどの場面で使われるテキストか分かりません。適切に翻訳するためには、このコンテキスト情報が必要になります。

会話テキストの場合は、DLGファイルで会話の流れが管理されていて、これは「Near Infinity」というツールを使うと閲覧することができます(詳細は後述の「会話の流れの確認方法」)。

スプレッドシート上で効率的に翻訳を行うために、DLGファイルを解析してコンテキストデータを抽出するツールを作りました。

・url

 

 

出力用テキストの整形

 

フォント関連

ルビを埋め込んだフォント作成


フォント改変によるサイズ調整

Overrideファイルによるフォント調整

 

翻訳関連

会話の流れの確認方法

翻訳テキストの用語集による置換

翻訳テキストのダウンロード

ゲーム内でのStrrefの確認方法

ゲームのテキストには通し番号が振られていて、これを「Strref」と呼びます。

テキストがまったく同じ場合、ゲーム内では区別がつかないので、Strrefを表示させる機能があります。

 

 

 

 

改行関連

改行用スペースの自動挿入

行頭での改行の修正

本作のダイアログ欄やジャーナルの概要欄では、行頭に自動的に半角スペースが挿入されているため、長い日本語テキストを表示しようとすると行頭で改行されてしまい、場合によっては文字が見切れてしまいます。

<図>

<図>

これは、後述の「インターフェースを改変する方法」で生成される「UI.menu」を改変することで修正することができます。

具体的には、

 

 

画像関連

日本語化する画像ファイルを抽出

英語テキストの除去

画像を日本語化

日本語化した画像を変換

 

ゲームプレイ関連

マウス操作

  • 左クリック:移動、アクション、キャラクター選択
  • 左クリックドラッグ:複数キャラクターを選択
  • Shiftキー+左クリック:走って移動、キャラクターを追加で選択
  • 左ダブルクリック:アイテムの個数選択
  • 右クリック:アイテム・呪文の詳細表示、アクションのキャンセル
  • 右クリックドラッグ:隊列の方向を指定して移動
  • ホイールスクロール:カメラの拡大縮小
  • 中クリック:カメラの拡大縮小をリセット
  • 中クリックドラッグ:カメラを移動

 攻撃や会話や、対象を選ぶ必要があるアイテムや呪文などは、カーソルが変わった後に対象を左クリックします。右クリックでカーソルが元に戻ります。

 キャラ選択は、画面下のポートレートをクリックすることでも可能です。

 アイテムの受け渡しは、インベントリ画面でアイテムをポートレートにドラッグします。

キーボード操作

  • スペース:一時停止
  • Tab:詳細を表示(オブジェクトアイコンやキャラ名を表示)
  • Q:クイックセーブ
  • L:クイックロード
  • A:攻撃(アイコンが変わるので、対象をクリック)
  • R:常に走る/歩くを切り替え
  • C:カメラをキャラクターに追従
  • ↑↓→←:カメラを移動
  • S:ステータス画面
  • J:ジャーナル画面
  • I:インベントリ画面
  • M:マップ画面
  • O:オプション画面
  • W:メイジ呪文画面
  • P:プリースト呪文画面
  • G:ゲーム画面に戻る
  • 1:キャラクター1、選択肢1を選択
  • 2:キャラクター2、選択肢2を選択
  • 3:キャラクター3、選択肢3を選択
  • 4:キャラクター4、選択肢4を選択
  • 5:キャラクター5、選択肢5を選択
  • 6:キャラクター6、選択肢6を選択
  • 7:キャラクター1-2、選択肢7を選択
  • 8:キャラクター3-4、選択肢8を選択
  • 9:キャラクター5-6、選択肢9を選択
  • 0:キャラクター1-3を選択
  • -:キャラクター4-6を選択
  • +:すべてのキャラクターを選択
  • Enter:ダイアログの続きを表示
  • Esc:オプション画面

「+」キーの「すべてのキャラクターを選択」は、日本語キーボードだと機能しないようです。オプションのキーアサインで、別のキーを割り当てると使えるようになります。

  • オプション -> ゲーム設定 -> キーアサイン

フォントサイズを変更

オプション設定から、フォントサイズを7段階で調整することができます。

  • オプション -> ビデオ設定 -> フォントサイズ

f:id:kengo700:20201005131003p:plain

f:id:kengo700:20201005131017p:plain

下記ファイルをメモ帳などで開き、「SetPrivateProfileString('Fonts','Zoom','xxx')」の数字を書き換えることで、オプションからは設定できないフォントサイズにすることも可能です。

%USERPROFILE%\Documents\Planescape Torment - Enhanced Edition\Baldur.lua

ただしこの方法では、キャプションなどのサイズは固定になっています。これを調整する方法は、前述の「フォント改変によるサイズ調整」および「Overrideファイルによるフォント調整」をご覧ください。


常に「詳細を表示」

NPCの名前やインタラクトできるオブジェクトを表示する「詳細を表示」機能は、Tabキーを押している間しか有効になりません。
通常では常に「詳細を表示」することはできませんが、タブレット用のインターフェースに切り替えることで、ボタンで表示・非表示を切り替えられるようになります。

  • オプション -> ビデオ設定 -> タブレットインターフェースを使用
  • 画面右下の虫眼鏡アイコンをクリック

インターフェースはタブレットに最適化されたものになりますが、マウス&キーボードでも問題なくプレイすることができます。

f:id:kengo700:20200903153334p:plain

 

インターフェースを改変する方法

デバッグ機能の一つである「UI改変モード」を使うと、インターフェースの位置やサイズを好きに改変することができます。
例えば会話テキストの表示領域が小さいと感じた場合に、領域を広げることができます。

  • ドキュメントのPlanescapeフォルダ内にあるBaldur.luaをメモ帳などで開き、下記を追加

 SetPrivateProfileString('Program Options','UI Edit Mode','1')

  • ゲーム内でF11キーで編集モードを開始し、UIをドラッグ
  • F11キーで編集モードを終了

変更内容はoverrideフォルダ(日本語化している場合はlang>ja_JP>overrideフォルダ)のUI.menuファイルに保存されています。このファイルを削除すれば、元に戻すことができます。 

f:id:kengo700:20200905175717p:plain

「UI改変モード」中にマウスオーバーしたときに表示される情報の「Line:」の数値は、UI.menuファイル内の行数を表します。

UI.menuをメモ帳などで開いて該当の行の処理を書き換えれば、インターフェースの位置やサイズ以外の改変も可能です。

UI.menuはLuaというプログラミング言語で書かれています。インターフェースの調整程度であれば直観的に編集できますが、より込み入った改変をしようとすると、Luaの知識が必要になります。

UI.menuを編集した後、ゲームでF5キーを押すと即座に改変が反映されるので、ゲームを再起動しなくても確認することができます。

 

ジャーナル検索で日本語入力

本作ではジャーナル画面でクエストと日記を検索することができますが、通常では日本語を入力することができません。

ただし、少し手間がかかりますが、メモ帳などに入力したテキストをコピペすることができます。テキストを「Ctrl+C」でコピーし、ジャーナル画面の検索欄で「Ctrl+V」でペーストです。

f:id:kengo700:20201003151159p:plain

<図>

ただし、日本語化の禁則処理の影響で、閉じ括弧や句読点のひとつ前の文字は検索できなくなっています。例えば「『ファロド』を見つける。」というテキストの場合「ド』」は検索に引っかからないため、「ファロ」で検索してください。

 

設定をリセットする方法

本作のゲーム設定は下記ファイルに保存されています。

%USERPROFILE%\Documents\Planescape Torment - Enhanced Edition\Baldur.lua

このファイルを別の場所に移動してからゲームを起動すれば、すべての設定が初期化されます。ただしオプションから閲覧できるムービー一覧もリセットされることに注意してください。

このファイルをメモ帳などで開いて編集することで、個別の設定を変更することもできます。

クエスト名などの原文を確認

 

小ネタ

イースターエッグ

他作品を引用したと思われるネタなどが、下記ページにまとめられています。

Planescape Scramble: The Hidden Easter Eggs of Sigil - The Beamblog

このページでは紹介されていませんが、ジョン・ミルトンの『失楽園』の一節がゲーム中に出てきます。

Such place eternal justice had prepared for those rebellious...
Here their Prison ordained in utter darkness...
...their portion set...
As far removed from Gods and light of Heaven...
As from the Center thrice to the utmost pole. 

 

日本のアニメが元ネタのアイテム

日本の90年代アニメが元ネタとなったアイテムが実装されています。

Ring Zero | Torment Wiki | Fandom

Umei Kaihen | Torment Wiki | Fandom

Bell's Shield | Torment Wiki | Fandom

 

未実装のネタテキスト

ゲームには実装されていないネタテキストが、テキストファイル内に残っています。

[Strref:2844]

I'm Dak'kon. A githzerai. One of the party members. I don't have anything to say right now. You should check out my cool combat animations, though. Too bad there aren't any Chambara movie death animations for monsters I kill...
Dak'kon: "Watch my sword: koroshicharu!"
Hive Thug: "Gaaahh... munen nariiii..." *Sssssssss* <--- arterial blood spray *thud*
Dak'kon: "Fmm." *sching* <-- *karach* blade being sheathed
(Cherry blossoms fall from top of screen.)

 

未実装のクエストやアイテム

本作では、ゲームには実装されなかったデータがファイル内に残っています。下記ページで、その一覧を確認することができます。

Platter's Unimplemented Files in Planescape: Torment - Bootstrike.Com

この未実装のデータを復活させるMODが公開されています。ただし、本サイトの日本語化パッチでは未実装のテキストは翻訳していません。

[MOD] PS:T Unfinished Business - Reloaded — Beamdog Forums